散歩道<1570>
鶴見俊輔さんと語る・生きる覚悟(4) 対談相手上野千鶴子さん (1)〜(4)続く
公と私がつながる問題の立て方、難しくなった(上野)
上野 大学はそういう人を育てられないんですよ。そういうシステムじゃないですもの。問題をどう自分の中に立てるかということだけは、だれにも教えられないです。
鶴見 丸山真男さんは旧制一高のとき(特高警察に)牢屋へ入れられ、自分の人生終わったと思った。そのときの恐怖と苦悩が彼のグリップなんです。それが死ぬまで続いた。丸山さんの真骨頂だ。
上野 たとえば明治みたいに同時代の気分が共通しているときと違い、今は何が自分にとって核心的な問題なのか、ばらばらになっていますね。東大にも、リストカットとか摂食障害とか、それから逃れられない問題を抱えた学生たちがいますけど、その子の問題が同時代の他の人と簡単にシンクロしない。
鶴見 (私たち)明治維新というものをとらえそこなってるんです。フランスのように革命を何度もやりかえす持続の精神はなになのか、という捕らえ方をしていない。江戸の終わりに維新が起こったのは世界史の中で特別なことなのに、それを自分たちの方法で書くことが出来ないでいる。積み残した問題だ。上野公の問題と私の問題がつながるような、そういう問題の立て方が難しくなっていると思います。
鶴見 フランスの場合、ミューレ(歴史学者)にはそれがある。
上野 生活史を書くことがそのまま大きな歴史を書くことと同じだった。それが成り立つ幸せな時代だった、という気がします。今は歴史がどんどん小文字になってる。明治から100年で日本がここまで壊れたのはなぜか、どう考えていらっしゃいます。
鶴見 社会が残ることに国家が気がつけば、社会は国境を越えます。仏陀は、自分のなかに灯火をともし。それを信じて犀の角のようにただ独り歩めといった。その考えが私の根底にある。
'07.2.20.朝日新聞・鶴見・上野千鶴子さん(社会学者)
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