散歩道<1569>

                 鶴見俊輔さんと語る・生きる覚悟(3)   対談相手上野千鶴子さん       (1)〜(4)続く
「人生の、下り坂」を自認する社会学者上野千鶴子さん日本の学校教育の衰退を憂える鶴見俊輔さん。独自の発想で語る2人は、展望の見えない今の日本で、押し付けられた型にはまらない個人として生きる覚悟を迫る

公と私がつながる問題の立て方、難しくなった(上野)

 鶴見
 私が京都大学人文研にきたとき。ルソー(18世紀の作家。思想家)の位置づけをめぐり助手や助教授たちと話をした。彼らの考え方は、ルソーは進歩思想、ホッブスは反動思想、これを高めるのがマルクス、レーニンと、ひとつひとつボックスに入れて段階的にあがっていく。
 上野 
正反合の弁証法、進歩史観ですね。
 鶴見 私は全然そう思っていないんです。革命による全体主義への恐怖がホッブスの文体を貫いており、ルソーには自分で恐怖政治を作る要素があるんだと私がいっても、跳ね返されちゃう。これは進歩、これは反動とボックスに入れるのが、明治以来の日本の学校教育の型なんだ。教育問題はねえ、どうして明治初年から東大でも創造的な学者が出たのかということです。夏目漱石や森鴎外がそうです。

 上野
 東大でもというのがいいですねぇ(笑い)。だけど東大が育てたわけじゃないでしょう。
 
鶴見 そう。それは長い明冶以前があったからです。漱石は、イギリスの近代文学が自分の考えてきた日本や中国と全然違うのはなぜか、という問題を解こうとして大変苦労した。漱石が生きている間は文化人類学が発達していないからいけないんだが、かれの問題の立て方はオリジナルで、すごい。そのグリップの強さが生涯続いた。グリップがすごい、これは独創性がある。問題をつかんでいる、ということで驚かせる人は今は非常に少ない。

'07.2.20.朝日新聞・鶴見・上野千鶴子さん(社会学者)

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