散歩道<1556>
歴史と向き合う・被害と加害意識の変遷(5) (1)〜(5)続く
善悪二元論の裁断やめ 国際的な対話に向けて 「複雑な現実」直視せよ
一方で肯定的な読者評にも「要するに戦前の日本はゴミぐずであり、日本国憲法によってまともな国に生まれ変わったということである』といった少々単純なものもあり、驚きました。
「現実の社会や歴史は複雑で、天使や悪魔が実在しないように、100%の被害者や100%の加害者はめったにいない。それは現実社会を冷静に見れば誰でもわかるはずですが、物事を善悪二言論で裁断したい人、こちらは正義、あちらは極悪と割り切る誘惑に勝てない人は多いのです」
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・・・・愛国心もおなじですね。「愛国心それ自体がいいとか悪いとかいう二言論の議論はやや単純だと思います。そこでは愛国心の内容を問う議論が欠けやすい。例えば文部科学省が全国の校長に「明日から黒旗を揚げなさい」という通達をしたら、「たとえ処分されても私は信念として日の丸をあげる」とう校長が何人いるでしょうか。一方で「日の丸・君が代」の強制に反対している先生には、こんなことをしていたら日本はアジアの中で孤立してしまうと考えている人も多いと思います。そのように日本の未来や国際的立場を処分覚悟で真剣に考えている先生と、命令しだいで日の丸でも黒旗でもあげる校長とでは、どちらが本当の「愛国者」でしょうか」
「歴史も現実も複雑なもので、善意とか、被害・加害とかの二言論では論じきれない。愛国心も時代や国で内容や文脈が違い、愛国心を持てば政府や戦争の支持に直結するほど 単純ではない。そうした複雑さを直視せずに議論の前進も、国際的な対話もあり得ないと思います」
'07.2.27.朝日新聞・慶応大学助教授・小熊英二氏
