散歩道<1555>
                   歴史と向き合う・被害と加害意識の変遷(4)           (1)〜(5)続
               
 負の過去はどのように克服できるのか。和解のためには何が必要か・・・戦後日本の歴史認識問題企画「歴史に向かう」、アメリカ、日本、韓国の識者にこの疑問をぶつけた。

・・・・・そういう歴史認識の変化は、愛国心の問題と連動しているように思います。
 「敗戦から60年代初めまでは、保守派だけでなく、革新派も愛国心を訴えていました。あの悲惨な戦争で死んだ多くの日本の民衆の犠牲の上に我々は立っている、だから戦争指導者の責任を追及しつつ、民衆の尊い犠牲を忘れずに平和な国を築こう、というのが革新派の愛国心でした。ところが70年ごろから、日本人は指導者も民衆もみな加害者だった、『民衆の尊い犠牲』などというのは民衆の戦争責任を隠蔽
(いんぺい)する『戦後民主主義の欺瞞(ぎまん)』だという論調が新左翼周辺から出てきた。それがアジアへの加害の事実に目を向けさせた功績はありましたが、同時に革新派の愛国心を滅ぼし、愛国心といえば保守派のもので、進歩派は愛国心を批判すべきだという構図をつくった。そして70年代以後は、進歩派はもっぱらアジアへの加害を強調し、保守派はあの戦争はアジア解放や自存自衛の戦いだったと主張する図式が固定してしまった」
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・・・・その二者択一の図式を取る人は今も多いですね。「私は昨年『日本という国』という中学生以上を読者に想定した近現代史の本を出しました。本の内容の大半は明治の近代化と、戦後の日本がいかに米国に従属してきたかで、戦争の記述は全体の約1割。しかもその半分以上は、いかに多くの日本人が悲惨に死んでいったかの記述で、アジアの被害に触れたのは本全体の5%以下です。ところがインターネツト書店『AMAZON』
*1の読者評では、「子供を自虐洗脳するために書かれた本」とか「日本人の命はゴキブリ以下とでも思っているのでしょう」といった批判が並んでいます。彼らは本全体の5%の部分部分しか目に入らないかのようです。

'07.2.27.朝日新聞・慶応大学助教授・小熊英二氏


備考:散歩道<1435>アマゾン・G・メール*1