散歩道<1541> (1)〜(5)
鶴見俊輔さんと語る(1)・核と戦後民主主義
戦後の焼け野原の風景が、憲法の前文・9条につながった(鶴見)このままだと、核という魔物に乗っかった平和しかないことに(姜)
姜 北朝鮮の核について、ただ怖い、脅威だというだけの議論ではいけない。今後、武力衝突が偶発的に起きるかも知れず、第2次朝鮮戦争になるのかと暗澹とした気持ちになることがあるが。
鶴見 戦後、連合軍総司令部(GHQ)で憲法草案を担当したアメリカ人が東京に来たとき、そこは焼け野原だった。原爆も二つ落としていた。その風景を前にして、アメリカ人としてではなく、人間としての感激が湧き出たんでしょう。ひどいことを人間が人間にするもんだなと。その風景が憲法の前文、戦争放棄の9条につながった。外国人が関与したから憲法もだめだなんてことは決してない。原爆の発明は人類の歴史にかかわる。必要もないのに原爆を落とした原罪がアメリカにはある。これを日本から筋の通った言葉でつき返すのが9条の核心にある問題だ。
姜 日本は9条の根幹に2つの被爆体験を持っている。それをもっと掘り起こせば、アメリカの核と北朝鮮の核をうって返せる。痛みの中から生まれた憲法の、痛さの原形をかえりみず、押し付けか、おしつけでないかという議論をしているのは、あまりにもったいない。この60年間、被爆とは何かをアメリカにわからせるのが日本の責任だった。アメリカがそれをわかっていないということの延長線上に、北朝鮮の核をはじめ核拡散の問題もある。このままだと、核という魔物にのっかかった平和しかないことになる。
'06.10.24.朝日新聞・鶴見俊輔さんと政治学者・妻尚中さんが語る。
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