散歩道<1535>
世界の窓・日本外交再生のシナリオ(3) (1)〜(3)続く
もう一つのアジア外交の課題は、いうまでもなく、「台頭中国」に対する認識と戦略である。中国の脅威と反中国を煽り立てる人たちは期待感を含め、「強大化する中国はいずれ米国と対決する」「米国も反中国を鮮明にしていく」と想定しているようだ。もちろん、その可能性がないとは言えない。しかし私の見るところ、中国は部分的対立はともかく、長期的な基本戦略として米中対決は選択しない。いや米国と同盟関係を目指す可能性さえある。中国がアジアにおける問題処理能力を高め米中機軸を選択する可能性はある。日本が特別なプレゼンスを持たないまま、こうした状況が生まれるなら、本当にただの「普通の国」になってしまう。日本はこうした見通しを逆手にとり、かつ韓国としっかり連携しつつ、日韓中米の4カ国安全保障協定の制度化、さらには豪州なども加えた「太平洋条約機構(PATO)」の構想を提唱すべきではないか。21世紀の安全保障は、1国ないし2国の覇権的な秩序やバンドワゴン的秩序によるのでは問題が多い。経済と同様に、対話と国際ルールの強化を通した相互協力、相互牽制・抑制が機能する協調的安全保障の制度化こそが重要なのであり、日本はこの面で主導的役割を果たすことを最大の外交課題とすべきなのである。テロや海賊、感染症や環境汚染など越境性が高く緊急性を要する課題も少なくない。これらも視野に入れ、問題解決型フレームを構築することが重要だ。そして、こうした取り組みをリードするには、近隣諸国との信頼関係を高めていくことが何より欠かせないのである。
'06.11.15.朝日新聞・早稲田大学教授・天児慧(あまこさとし)氏
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