散歩道<1533>
世界の窓・日本外交再生のシナリオ(1) (1)〜(3)続く
膠着し(こうちゃく)、閉塞(へいそく)した日本外交に一筋の陽光が差し込み始めた、阿倍新首相の中国・韓国の訪問である。私はあるテレビ局の番組で「日本外交の久々のクリーン・ヒット」と評した。もちろんこれは日本外交の新たな展開の第一歩であって、それ以上ではない。また阿倍首相の「靖国参拝あいまい戦略」と歴史認識の危うさを引きづっていることも間違いない。しかし首相就任前から「アジア外国の建て直し」に意欲的な発言していたこと、阿部政権を支える自民党幹部や外務省幹部らが政権誕生以前から対中関係改善のために水面下で布石を打っていたこと、そしてなによりも自らの歴史認識や靖国観を封印してまで首脳会談実現に踏み切ったことをあわせ考えるならば、新首相の対中、対韓関係改善は本気であると見ていいだろう。私は日本外交再生の最大のカギはアジア外交にあると見ている。米国との良好な関係維持は何も日米同盟重視論者の専売特許ではなく、日本外交の大前提である。それを踏まえてわが国を取り巻く全体状況を見渡すならアジアにこそ多くの重大な懸案事項がある。それらを適切に処理することで日本外交的プレゼンスは回復し、米国がアジアにおける日本の役割を見直すことにもつながる。
'06.11.15.朝日新聞・早稲田大学教授・天児慧(あまこさとし)氏
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