散歩道<1515>
思潮21・新しい世界秩序への英知(1)・グロバル化制御へ 国際システム構築を (1)〜(4)続く
誰もが「やはり地球は丸い星だ」と言うことを実感したのは1969年だった。米宇宙船アポロ11号のアームストロング船長が月着陸船イーグルから月面に降り立ち、月の地平線から漆黒の宇宙の彼方に昇る地球の映像を送信してきた。その瞬間、知識としてではなく、自分自身の目で、我々が地球と言う宇宙空間に存在する一つの星に共生している生命体であることを納得した。
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その翌年、「月の石」が展示された大阪万博には6千万人を越える入場者があった。そして1972年、ローマクラブの「成長の限界」が発表され、世界中で9百万部が読まれた。「資源枯渇」「環境汚染」というキーワードと共に地球の有限性という認識が共有され始めた。「宇宙船地球号」という言葉が違和感なく受け入れられ、「グローブ(地球)という概念に視点を置いた「グロバリズム」が国家間の関係を想定した「インターナショナリズム」にとって代わる時代の到来を暗示した。だがそれでも、米国の宇宙開発の意図が、先行したソ連の人口衛星打ち上げへの対抗にあった事実が象徴するごとく、80年代までの世界は「冷戦」という地球を分断する対立の構図の中にあった。そして冷戦の終焉、それはグロバル化する経済の潮流の中で、ソ連を中心とする社会主義圏が非効率性と硬直性故にシステム破綻した過程ともいえる。社会主義の自壊だったにもかかわらず、グロバル化の勝利は資本主義の勝利と誤認され、対抗勢力を失った資本主義は、際限なきマネーゲームを心おきなく追求する性格を強めた。地球全体を一つの市場に平準化してゆくダイナリズムとして「グロバル化」が世界を席巻し、気がつけば「グロバル化が必ずしも世界を幸福にしていない」という事実に我々は慄然(りつぜん)とした。
'07.1.15.朝日新聞・(財)日本総合研究所会長・寺島実郎氏
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