散歩道<1494>

                  私の視点・憲法60年・明るい年にしていくために(1)              (1)〜(2)続く

 フイリッピン戦線で戦った大岡昇平氏は、30代なかば、妻子ある身を戦闘に投じられ、死は目前だった。「いま日本が手を挙げたら、一番困るのはルーズベルト大統領だな」と思う。ソ連国境の戦闘で命をひろった五味川純平氏は「戦争は経済行為だ」と見抜いていた。2人の優れた文学者の指摘を、この年頭にしっかり思い返したい。戦争体験世代が命をかけてつかみとった「真理」の意味を。06年の秋以降、生活が苦しくなったという人達が増えた。保険料があがり、医療費の自己負担は増え、年金の手取りは減って、この国が「富国強兵」ラインを行く結果が、生活をむしばみはじめている。昭和前期の、戦争前夜の世相と似ていますか、という質問は多い。人々が口をつぐみ、世のなりゆきをうかがって腰を引く、その点では、全くよく似た世の中がまたしても姿をあらわした。この国には今も「お上(かみ)」に対する脅え(びえ)が生きているのか。ことなかれでゆくことこそ、安全コースという守りの姿勢は何故なのか。このままでは、歴史は繰り返される。教育基本法をゆがめ、自衛隊法を変えて公然たる軍隊にし、戦争できる方向が選択された。そこに主権者である国民の意志はどれだけ反映されているのか?主権在民をマンガにする政治が通ったのだ。
 

'07.1.4.朝日新聞・作家・澤地 久枝さん