散歩道<1477>

                      経済気象台(118)・日中関係

 我が国の経済の回復が顕著である。的確な政策によりデフレがほぼ克服できたことは政府は胸を張り、企業経営者は自らの戦略が功を奏したと自信をもって設備投資を拡大している。今や銀行は貸し出しに注力し、企業の業績は最高レベルを更新している。有効求人倍率は1.0を超え、賃上げが復活、株価も順調、3大都市圏の商業地と東京の宅地は地価上昇に転じたという。金利、為替の動向が気になるものの、暫くは成長が続きそうだ。だが実は、わが国経済をもっとも力強く後押ししているのは隣国中国の経済成長である。ここ5年間でわが国の輸出入総額は30%以上も伸びたが、そのうち4割近くが中国との貿易拡大によるものだ。日中間の貿易額は5年前の2倍以上、今や米国に匹敵するものとなっている。この日中の経済関係は,志ある日中両国の政治家や実業界に身を置く人たちの国交回復以前からの努力抜きには語れない。歴史的に難問を抱える日中双方にあって彼等は隣国同士の発展と繁栄とを願いながら身体を張って経済協力に取りくんできた。その結果として今日の関係がある。今後も中国の消費拡大にあわせ、両国間の輸出入と日系企業の中国進出はさらに増えていくだろう。わが国にとって中国が一層重要な国になることは疑う余地はない。にもかかわらず、政治の世界にあっては日中間のまともな外交が出来ていない。その原因の太宗はわが国の政治家にあると思う。今のわが国の政治、行政の仕組みでは世界に通用する大局観、国際視野、識見と、それらに裏打ちされた的確な歴史認識を持つ政治家は出て来ない。国際社会を知らず、歴史認識を語れなければ、当然、外交は行き詰まる。足元の景況感極めて良く桜咲く季節であるにもかかわらず、「日中両国民の将来にとって取り返しがつかないことにならなければ良いが」という不安が頭から離れない。

'06.3.29.朝日新聞

関連記事:散歩道<423>日中両国眼鏡はずして、<検索>日中外交