散歩道<1473>

                    経済気象台(114)・世界に冠たる部品製造文化

 サッカーW杯で予選を戦ったイランを含め、世界の自動車部品製造の現場では、日本語の「カイゼン」という言葉が飛び交う。今、欧米先進国や新興国の部品メーカーが、日本から部品製造を学ぼうとしている。それは、日本の自動車産業が世界最強となった理由の一つが部品製造にあるからだ。樹脂バンパー、鋼板ボデーやネジに至る3万点の自動車部品を安く高品質に生産するには、設計技術だけでなく、製造技術と製造ノウハウが必要だ。形状が同じでも、高性能の部品を安く、高い品質で量産するとは容易ではない。部品に最適な材料と製造技術を開発すること、品質・性能を保ちながら量産するには、製造現場のノウハウも必要である。後発のメーカーが部品の製造を模倣から始めるのは歴史の常。かって、日本も先発の欧米部品メーカーから基本技術を導入して部品生産を開始した。その後、日本は導入した技術に改良を加え独自の製造技術を開発。さらに、現場重視、チームワーク、絶え間ない改善、無駄の排除、仕入れ先との協力など日本独自の文化背景に独自の製造ノウハウを獲得した。同じ機械を用い、同じ方法で部品を製造しても、日本ほど高品質な部品を均質に安く作れる国は無い。欧米の先発の欧米部品メーカーの多くが部品製造の現場を重視しなくなったことも、日本が際立つ原因となった。新興諸国では、自動車部品を自国の需要向けだけでなく安価な労働力を生かした輸出産品とするため、日本からの部品製造技術導入に積極的だ。日本から、自動車関連企業を引退した専門家を招請して部品製造現場の顧問とするケースも新興国で増大している。しかし、独自の文化や特性をベースに改良を加え、その国の部品製造文化を創り出して初めて世界の競争舞台にたてる。

'06.6.朝日新聞

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