散歩道<1464>
ディベート経済・今後の経済・国家の役割は?(2) (1)〜(4)続く
再配分より市場監視を
今年の金融市場へも影響を与えたライブドア事件、村上ファンド事件では、証券市場で不正な取引によって利益を上げたとして逮捕者が出た。両事件とも裁判中だが、事実だとすれば、市場競争の前提となるルールに違反して、巨万の利益を得たことになる。不正なやり方がまかり通るから市場競争への反発が強まるのであり、公正な競争で利益をあげたなら誰も文句は言わない。松阪大輔が毎年10億円の年俸をもらっても、不公平だと思う人はいないだろう。従って、政府の役割は公正な市場環境をつくることだ、という考え方もある。市場ルールを整備し、市場ルールをしっかり順守させる事後チェック機能が重要だ。格差問題の象徴でもある正社員と非正規労働者との雇用格差についても。これは市場ルールの問題、と考えることが出来る。労働者全体をマクロ数字で見れば、必ずしも日本の労働者の取り分が少なすぎると言うわけではないからだ。日本の労働分配率(国民所得を資本家と労働者に分配した時の労働者の取り分)は、最近低下する傾向があるとはいえ、欧米諸国と比べて、格段に低いわけではないようだ。バブル崩壊後の90年代全般は、労働分配率は上がり続けた。労働者のツケを、今、はらされているという面もある。企業の取り分を減らして賃金に回す、と単純にいけるかとなると難しい。むしろ労働者の中で、優遇されている者と不当に低い境遇に置かれている非正規労働者の格差が大きいことが、例えば将来への不安を高めて、消費を減退させるなどの弊害を生んでいるのではないか。雇用格差の問題を解決するためには、同一労働同一賃金などの公正な原則を日本の労働市場に貫徹させることが重要となる。この問題について必要な政策は、政府による再配分というより、労働市場のルール作りといえる。
'06.12.25.朝日新聞・客員論説委員・小林慶一郎氏
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