散歩道<1447>

                      思潮21・世界史と日本史(3)                   (1)〜(5)続く  

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 たとえば日本の研究教育が、流血の大惨事をひきおこしたフランス革命を評価しながら、最少の内戦を終えた明治維新の限界を協調しがちだった不均衡をみればよい。同時代に政治家でありながら文人としても才を発揮した松平定信とゲーテの比較を通じて歴史的人間の苦楽を理解する構図は今の教育では不可能なのだ。豊臣秀吉とフエリーベ二世が同時代人であり、フイリッピンの領有をめぐってしのぎを削った事実は、現在の世界史と日本史の分離状態では理解も困難であろう。歴史への関心は、事実を知ろうとする想像力と発見への新鮮な感動から始まる。中国史家の宮崎市定は、人類が一つの群であり歴史とは最初から最後まで世界史であると語った。敗戦直後すでに、世界史が可能かどうかは問題でなく、あるべき姿は世界史の外にないと述べていた。世界史の未履修問題は、生徒の救済策に終始したが、本質的には歴史教育のあり方を問い直す深刻な要素が含まれている。日本の世界史教科書の内容は概して歴史事象に公平であり、叙述と分析の客観性は外国の現状と比べても誇ってよいものだ。外国では、近現代の歴史事象を中心に自国史を学ぶのが普通である。


'06.12.11.朝日新聞東京大教授・山内昌之氏


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備考:私の経験談から言わせてもらうなら、議論する場合、歴史に造詣の浅い人は、深い人にまず勝つことはないでしょう。

<54>クリントン大統領と国文学者・*1橘曙覧
「楽しみは 朝起きいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時」という和歌を、1995年天皇陛下が始めてアメリカを訪問されたとき、クリントン大統領は以下のようにスピーチしています。そのメッセージは次のようなものです。
It is pleasure rising in the morning I go outside and find that a flower has bloomed that was not there yesterday