散歩道<1446>

                      思潮21・世界史と日本史(2)                   (1)〜(5)続く  

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 孔子から吉田松陰にいたる先人達は、世界の意味を考えるには、人間が実際に歴史の行為として示した具体的事実に即して探求するのが有益だと語ってきた。人間は与えられた条件と経験に立脚して物事を考える。教育で歴史や論理的思考を軽視する風潮は、物事を因果関係や筋道で考えない刹那
(せつな)的な若者を育てる閉塞状況につながったのではないか。内外をとわず歴史の教訓や先人の英知を学ぶことは、若者のあいだに考える力をはぐくみ素直に感動する喜びを与えるはずなのに、日本の現状は逆の方向に進んでいる。歴史の基本知識を学ばないと、国定教科書などで自国中心の歴史観を学んだ外国人を前に、正しい自己主張も出来ない人間は卑屈になるか、むやみに反発するか、いずれか両極端になりがちなのだ。小学生の英語必修化の前に必要なのは、自国の歴史と文化に与えられた健全なアイデンティーテを先ず確立することではないか。「カクノゴトクアルモノハ、カクノゴトクアル」という歴史学の金言は、どの職業についても世事を冷静に考える基礎となる。そもそも。グロバリゼーションの時代に外国人に向かって日本の歴史や文化を説明できない大人が多い原因の一端は、世界史と日本史の教育が有機的に結合していないからだ。

'06.12.11.朝日新聞東京大教授・山内昌之氏


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備考:私の経験談から言わせてもらうなら、議論する場合、歴史に造詣の浅い人は、深い人にまず勝つことはないでしょう。