散歩道<1431>
経済気象台(109)・政治に翻弄されるドル
先月行なわれた米国の中間選挙では、上下両院とも民主党が共和党を制し、過半数の議席を獲得した。方向を転じた振り子は大きく揺れていきそうである。恐らく民主党が2年後の大統領選挙も勝利を納め、議会においても優位はゆるがないとの見方が結構有力だ。そして、この政権交代へ向けての大きなうねりは、ブッシュ現政権の通貨政策にも大きな影響を与え始めている。今月中旬、米国と中国の経済閣僚が北京にあつまり、経済課題を話あう初会合が開かれる。この会合における最大の議題は、人民元の為替レートの切り上げである。これまでは言葉の上での応酬に終始しており、中国の貿易黒字の拡大にもかかわらず、為替レートの大幅な変更にはつながらなかった。しかし今回は違う。民主党は雇用の維持と拡大重視の観点から、ドル安による国内産業の保護育成策を求め、ブッシュ政権は議会運営上もはや受け入れざるを得なくなっているようだ。そこで中国と民主党との間に入って、証券会社出身の米財務長官が持ち前の交渉力で話を纏めようという構造である。赤字を拡大し、海外から資本を流入して経済成長を求めてきた、米国の「強いドル」政策の転換を意味している。この政策がこれまで成り立つたのは、米国が世界最強の軍事力を背景とする覇権国だったからである。ところが選挙の敗因の一つがイラク戦争とされ、磐石なはずの軍事力に揺らぎが見え始めた。さらに、イラク政策の見直しをブッシュ政権に提言する、超党派による報告書が近く公表され、イラクからの段階的撤兵が盛り込まれるという。事実上の敗北に他ならない。このことを見越したのか、ドル離れが静ずかに進みはじめている。対米追随といわれる日本の通貨政策にも大きな変更が待ち受けているように見える。ほこりをかぶった通貨主権を見直す時期ではないか。
'06.12.5.朝日新聞