散歩道<1430>

                     経済気象台(108)・バランスが崩れると

 経済効果の追求も、バランスが崩れるとひずみも現れる。既に二つのバランス悪化が要注意段階に入っている。一つは財政政策と金融政策遠く見合わせ。いわゆるアベノミクスは、かってのクリントン政権に置ける長期緊縮、金融緩和の形をとりつつある。財政危機を考えればある程度やむを得ない面はあるが、これが過ぎて最近ではいくつかの問題を世界に投げかけている。まずはバブルの輸出。欧米が住宅バブルやインフレ懸念を抑えるべく、過剰流動性を狙った利上げに出ているが、その側で日本が逆に超金融緩和で流動性を世界に供給している。これでは欧米がいくら利上げをしても効果が出ない。いまや世界一安い金利の円で調達した資金が世界を駆け巡っている。次ぎは円安。内外金利差の拡大を背景に、ユーロ円は記録的な円安水準になっている。欧州からは低金利による円安誘導で、輸出の独り占めとの批判も出る。もう一つのバランス悪化は企業と個人の所得分配。ここ数年、企業はリストラで収益基準を強化してきたが、その裏で労働分配率は大きく落ち込んだ。労働者の犠牲の下に企業が立ち直ったわけだが、今度は財政が追い討ちをかける。今や空前の利益をあげる企業に対して、原価償却を通じた法人税の引き下げを検討。その一方で個人の所得税は国、地方とも特別減税の廃止で増税となる。また、各種老人関連控除の廃止で、高齢者の税負担が高まっている。更に最近では、生活保護の上乗せ分を撤廃し、医療費削減のために、長期リハビリが出来なくなり、希望をもてなくなっている人を多数生み出している。その一方で再チャレンジ担当大臣を置いて尻拭いでは、いかにもとってつけた感がいがめない。美しい日本を目指すのであれば、「経世済民」*1の優しさも必要ではないか。

'06.12.7朝日新聞

関連記事:散歩道<903>*1面白い話・経済「経国済民」