散歩道<1417>

                    経済気象台(104)・多重債務問題が抱える課題

 多重債務問題が社会問題化し、貸金業法の改正が俎上(そじょう)に上がっている。この問題への対処の過程を見ると、この国の抱えている根源的な課題のいくつかが垣間見られる。この問題への対処にあたっては、真因をつかんだ上で、短期・長期の施策を高じる必要がある。多重債務問題に関係する主体には、「貸金業者」と「債務者」があり、さらにその関係を律する「各種ルール」がある。解かりやすいのはルールの明確化だ。例えば上限金利について2種類の基準があったため、いわゆる「グレーゾーン金利」が生じてきた。こんなことを放置してきたことは、そもそも論外だ。また、倫理にもとるような回収行為が律せられるべきなのも論を待たない。一方、審査のあり方、定期的に利用状況や返済状況を審査する途上与信のやり方とかその管理方法といった日々の企業運営にかかわる部分については実務に疎い役所が過度な介入をすべきでない。それが一点だ。わが国では、解かりもしないビジネスに行政が過度に介入しすぎる傾向がある。結果責任をとるならともかく、何か問題が発生しても責任をとったためしなどない。銀行行政がその典型だ。行政はルールの設定とその番人に徹すべきだ。二点目は債務者側の問題だ。問題が大きくなった背景は単純ではないが、少なくとも多重債務を抱えてしまった人を安易に甘やかすことは正しくないのではないか。こうした政策に走るのではなく、大切なのは、こういう機会を捕らえて、自己責任*1を担い、主体性を涵養することの大切さを国民に訴えることだ。社会が活力を持つには国民一人一人の主体性が不可欠だ。社会問題の解決を行政に委ねる結果、行政が焼け太るプロセスは断ち切る必要がある。小さな政府の実現は、国民の主体性や強い自己責任の思いなしには難しい。

'06.12.1.朝日新聞

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