散歩道<1414>

                      経済気象台(101)コピーとベンチマーク  

 自動車市場が急速に拡大するアジアでは他社のデザインやブランド、技術を不当に流用する、いわゆる知的財産権侵害事件が多発している。なかでも中国では、自動車事業の高い利益率に引かれて新規参入をめざす企業が、世界のメーカーの自動車デザインや技術・ブランド名をコピーしたり、模倣したりする事件が後をたたない。先進国では、知的財産権侵害は損害賠償の対象であるとともに、発覚すると消費者から不信を買う。だが、新興国におけるコピー製品は、技術やデザインの開発コストブランドの育成コストが掛からない分、製品を安く作れるので、販売面でオリジナル製品を上回る例が多い。理不尽だが、コピー製品でも、一定の品質水準であれば、安価な方を選択する消費文化も存在する。一方、先進国の自動車業界では、市場で最も優れた自動車や部品を徹底的に分析し、自社製品の性能向上や 品質改善、価格低減に役立てる、いわゆるベンチマーク・・・・。市場で人気の製品を手本にするという手法だけは似ているが、かたやコピーが論外の犯罪行為であるのに対しベンチマークは製品を改善する為の正攻法だ。両者で最も違うのは、製品に対する製造者の責任だ。コピーでは製品の品質や安全性に対する責任があいまいになってしまう。オリジナル商品に隠された技術や製造ノウハウを理解し、製品に繁栄することなどは不可能だ。コピーするだけで、自社製品の品質・安全性検査を怠った場合、責任はもっと重い。先進国、新興国を問わず、たまたまいくつかの商品がヒットしても、自社製品を不断に改善しなければ厳しい競争を生き残れないのは自動車業界だけではない。コピーでは消費者の反応を次期モデルの開発に役立てることなど望むべくもないことを知るべきだ。

'06.9.12.朝日新聞

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