散歩道<1412>
経済気象台(99)・二極化の実相
このところ、六本木ヒルズ族の台頭や富裕層ビジネスの拡大などいわゆる「お金持ち」が注目を集めている。一方、では、無貯蓄世帯の割合が全体の約4分の1、単身世帯では4割強に達しようだ。それは「景気回復の実感なんてない、業況は厳しい」という声とともに、勝ち組負け組という二極化の現実を浮かび上がらせている。しかし実際には、そのような単純な二分法では割り切れない現実に出くわすことも事実だ。例えば、地方都市の多くで中心街の空洞化が進んでいる。背景には、住宅や公共施設の移転、大型小売り店の郊外立地などがあり、中心部の商店は「負け組」とされている。これまでも、様々な中心市街地活性化対策が打たれ、最近では大型店の出店を再び規制する動きもあるようだ。しかし、それでも空洞化がとまらない理由を探っていくと、その一つに、家賃を下げればテナントが入るのにそれを断る家主たちがいるという。これまで蓄えた資産があるから、安売りしてまで店を貸すことはないと言うことらしい。彼らは、表面的には「負け組」でも、十分な資産を持っているとう点では「勝ち組」なのだ。又、今後の社会保障制度改革において、年金や医療における高齢者の負担増・給付減は不可避である。それが高齢者の生活を何がしか圧迫することは否定できない。しかし、高齢者が皆弱者ではないことはもはや明らかである。実際、高額商品・サービスの消費拡大を支えているのは高齢者なのだ。かれらも、豊かな資産を取り崩して豊かな生活をエンジョイしている。このように、勝ち組・負け組の実態は単純ではなく、その組合わせも多様である。フロー(売上や賃金など)の敗者がストック(資産)の敗者では必ずしもない。単純な二分法に基づく議論は、時に真実を隠すし、危険ですらある。
'05.11.14.朝日新聞
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