散歩道<1409>

                    経済気象台(96)・人民元改革後の世界

 ここ数年、世界が求めてきた人民元改革を中国政府が予期せぬタイミングで実施した。ドルに対する切り上げ幅(2%)や変動幅(0.3%)は周囲の期待より小さく、通貨バスケットの中身もドル中心のようだ。このような小幅改革では中国の貿易収支や経済成長に与える影響は限定的、というのがコンセンサスである。にもかかわらず、今回の改革は、やがて世界経済を揺さぶる大変動の第一歩になるかもしれないと筆者は考える。世界経済における中国の存在感は、すでに十分大きい。中国は原燃料や工業製品・部品の輸入大国であり、とくにここ数年は、アメリカとともに世界経済の牽引役となってきた。実際、00年から04年にかけての中国の輸入増加額はアメリカのそれを上回る。中国はまた、世界の工場である。中国の安く豊富な労働力が、先進国企業による中国での低コスト・大量生産を可能にした。先進国はそのおかげで、企業収益の拡大や産業構造の高度化、低インフレ・低金利を実現できた。加えて最近は、中国がアメリカ経済にとって命綱のような存在となってきた。中国は、人民元安定のために購入したドルを、アメリカ国債に投資している。それが、アメリカの経常赤字の持続を可能にし長期金利を安定させて、住宅需要や消費拡大を支えている。そのような中で、人民元改革は行なわれた。中国は、産業・企業の強化や国内市場・制度の整備にあわせて、斬新的な改革を進めてゆくだろう。それによって、中国がグローバル経済により深く組み込まれ、人民元の更なる切り上げがその購買力を高める時、世界経済は、好むと好まざるとにかかわらず、今以上に中国を軸として動いてゆくようになる。中国の存在感の大きさを考えれば、そのインパクトがバブル時代の日本をはるかに上回ることは間違いない。

'05.8.11.朝日新聞 

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