散歩道<1405>

                      夕陽妄語(1) 2006年11月       米国と日本                 (1)〜(3)続く

 2006年11月に太平洋の両岸でおそらく歴史に残るだろう2つの事件がおこった。米国では「中間選挙」での共和党の大敗、日本国では衆議院での与党による「教育基本法」(以下教育法と略)改定案の強行採決。前者は米国の有権者のイラク戦争政策批判を、後者は政府与党の改憲へ向けての重要な第一歩を意味する。ブッシュ政権の政策は・・・・大統領の任期はまだ2年ある・・・・少なくともかなりの程度まで変らざるをえないだろう。日本の安倍政権がどういう政策をとるかはまだよく解からないが、教基法を改め、さらに憲法を改めようとする路線は変らないだろう。ブッシュ大統領は神の声を聞いて決定を下したという。「民の声は神の声」が民主主義の原則だとすれば、決定の内容の当否は別として、少なくともその原則には反する。しかし米国の世界における影響力が大きかったのは、武器とドルによるばかりでなく、また民主主義の理想によったのである。
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9・11以来戦争目的は半ダースほどあったが、どれも達成されたとはいえない。アフガニスタンでビンラディンは見つからなかったし、アル・カイダーの組織網は発見されなかった。イラクも同じ。大量破壊兵器は見つからず、侵入した米国を喚起して向かえる住民もいなかった。民主主義?しかし現地の住民にとっては、それよりも生きていることの方が大事だろう。ブッシュ大統領の支持層はまず国外で減り、次第に国内でも失われ、ついに中間選挙に及んだ。米国はこの機会に悪夢から抜け出すかもしれない。まだ政権交代の能力を持ち、「自由」の伝説を回復し、一度振り切った振り子を反対方向へ振り戻すかもしれない。中間選挙の結果は、21世紀の世界の問題の大部分が武力によっては解決できないという現実を理解させるかもしれない

'06.11.27.朝日新聞・評論家・加藤周一氏

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