散歩道<1403>

               鶴見俊輔さんと語る・国家を超え生きる流儀 (3)  対談相手医師・中村哲さん       (1)〜(4)続く
    アフガン周辺、民衆に国境はなく、ひと続きにつながっている(中村)。   欧米は近代国家の形をイスラム圏に押し付けて誤解している(鶴見)
   
○ ○ 戦争しないと成り立たぬ社会は長続きしない(中村
 中村 アフガニスタンで私たちが主にしているのは医療活動、00年の大干ばつを機に始めた井戸掘り・農業用水の建設、乾燥に強い作物の研究・普及だ。全長13`の用水路は完成した。職員、作業員あわせて千人弱。日本人は常時約20人いて、20代が多い。「青い鳥」を求めてくる子、日本社会になじめない子、などいろいろだが、志を立ててくる人は挫折することはまれではない。興味本位できた子が用水路が完成して砂漠が緑になり、何千人何万人が助かるのを見て、うれしい、この仕事をしてよかったと素直に言う。
 鶴見 
国籍をとわず、人間にかえるんだね。

 中村
 
農業、土木作業はかっての日本人なら誰でもできたが、若い子はシャベルを持つのも初めてで、穴掘りから練習しなさいと言って現場で鍛える。アフガン人はほとんどが農民で、子供も小さい時から大人と一緒に農作業をしているから、共有の文化として身についている。用水路つくりの参考にしたのが日本の伝統的な農業土木技術だ。針金で編んだかごに石を詰めた蛇籠をアフガンの用水路の護岸に使っている。これなら現地の人が補修・維持でき、経済的でもある。アフガンで使えるものを求め、日本の中世から江戸時代にかけての水利施設を見て歩いた。郷土史を調べるとその素晴らしさはたたえていても、どうやって造ったかはあまり書いていない。当時はわざわざ記載する必要がないくらい、だれもが身につけた当たり前の技術があったのだろう。

'06.11.28,朝日新聞

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