散歩道<1379>

                    経済気象台(91)・大阪に「商人道」復興を

 2005年の日本の姿を予想した「なぜ日本は沈没するか」(森嶋通夫箸)は、人口史観にもとづき、没落の主因として人口減少と儒教精神による倫理観の欠如をあげている。戦前生まれが活躍していたころまでは、まがりなりにでも家庭教育で儒教精神が教えられたが、80年代末ごろから戦後教育を受けた人々が社会の主流を占めるようになると職業倫理観も廃れてしまった。経済の土台である人間の質が悪ければ、経済の効率も悪くなり、没落するというのである。もちろんこの予想には反対意見もあろうが、しかし倫理観の欠落という点では納得させられる。これを、あえて私流にワンフレーズで言えば、倫理観に裏づけさられた武士道精神が欠落してしまった所に問題がある。こうした考えを借りれば、町人の町大阪は「商人道」を取り戻すことが、将来のために重要ではないか。歴史的にもわが国卸売り業の中心地だったし、高度成長期までは商業人が経済界に大きな力をもっていた。関西は戦後わが国流通革新の担い手であり、拠点であった。また商業分野にとどまらず、大メーカーの松下電器でさえ商業資本的性格を備えていたし、中堅・中小企業メーカーの社長も商人道を心得ていた。その商人道とはどういうものか。関西の経済史経営史を縦横無尽に語った故宮本又次・大阪大学名誉教授は「随筆大阪繁盛録」の中で、大阪商法の神髄として「始末」「算用」「信用」の意義を解説している。そして、「大阪復権が言われているが、単なる懐旧ではなく、それとの断絶を云々するよりもやはり過去の「商人心」や町人の行動様式をもう一度振り返って、それへの換骨奪胎を心すべきではないだろうか」と述べている。ここまでグローバル化している今日、アジア共同体に通用する商人道を、大阪に復活させるべき時期ではないか。

'05.10.31.朝日新聞

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