散歩道<1371>

                         経済気象台(84)・クルマ天武賦論

 1台100万円以上のクルマを、人は一生の間に何台買うだろうか。短い人で3年から5年に1度、長い人でも10年に1回はクルマを買い替える。人は移動手段としてのクルマではなく、クルマが生み出す便利で自由な移動空間に価値を見出すからこそ、高い金を支払う。初めてクルマを購入しようとする新興国の人々は数年分の給与をかけてでも購入を夢見る。経済成長を続ける中国は数年内に自動車の市場規模が日本を追い抜くといわれる。東南アジアやインドも市場拡大を続ける。世界では、1年間で6千万台ものクルマが生産・販売され、それを支える多様な部品、材料、機会、電気産業、鋳鍛造加工産業、販売、流通業がある。さらに旅客・運輸、補修、サービス産業も成立している。自動車産業は実にすそのが広く、多くの雇用を生み出した。だが、クルマがもたらす恩恵を広く世界の人々が享受しているだろうか。世界の自動車産業界では、強力な先発メーカ−が弱小な後発メーカーの発展を許さない体制が出来上がリつつある。先発メーカ−の中には、新興国を低コストの組み立て拠点として、又は市場としてしか見ない考え方が強い。販売数が増えても自動車産業が育たない国や生産数が増えても、部品・材料・加工産業が育たない国もある。弱肉強食の国際競争のなかで、勝ち残った自動車メーカーが、一部の国に集中しても、クルマがもたらす恩恵は広く世界に還元されるべきだ。このことを、国内と海外で1千万台づつの自動車を生産し、さらに海外生産を拡大しようとする、日本の自動車産業は、肝に銘じなければならない。クルマの恩恵を、天武の宝にふさわしく、人々が納得できる形で、世界に分配できて初めて、市場からの支持を獲得しつづけることが出来る。

'05.4.6.朝日新聞

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