散歩道<1361>

                   世界の窓・選挙に際し、わが友、米国よ(1)               (1)〜(3)続く

 ゲアハルト・シュレーダー前ドイツ首相ほど抜け目のない政治家を私は知らない。辞職後わずか11ヶ月で、544ページの分厚い回顧録「決断政治におけるわが人生」を出版した。その中で彼はイラク戦争直前の様子とジョージ・W・ブッシュ米大統領との衝突を描いているが、彼の回想録は米国と大半の欧州諸国が結果的に離反してしまった事態をよく説明している。01年9月11日、自室のテレビで世界貿易センターが崩壊する映像を見て、シュレーダーは涙した。ドイツも彼自身も苦境の米国の傍らに立つ、とブッシュにちかった。シュレーダーは米国人への「無限の連帯」を約束した。ドイツ軍兵士3900人を、米国指導の対テロ戦争作戦に派遣することを認める信任を議会に要請し、承認された。しかし、大統領が02年1月29日の一般教書演説で、イラクとイランそして北朝鮮を「悪の枢軸」と責め立て、これらが米国のつぎの標的になるという見通しが出てきたとき、前首相はブッシュに従うことを拒否した。ドイツはいかなる「冒険」の参加者にもならない、と。しかし、ブッシュ政権が彼が正に恐れていた種類のことに乗り出そうとしていることは月ごとに明らかになりはじめた。

'06.11.8.朝日新聞・独ツァイト紙元編集主幹・テオ・ゾンマー

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