散歩道<1359>
経済気象台(83)・経済地殻変動への対処
ここ数年、経済には大きな地殻変動が起きている特に、米国を中心とするIT革命第2弾が、広範に経済の基本前提を覆し、生産性の向上や新たなビジネスの創出をもたらす反面、これに乗り遅れた人々には目に見えない負担もみられる。いわゆるITバブルは2000年にはじけたが、その後もソフト面での開発・普及が急激に進み、生産や労働の形が大きく変わりつつある。例えば「場所」「時間」「労働力」の制約から大きく開放され、新しい形態での生産活動が、生産性を持続的に高める役割を果たしている。身近な所ではパソコンがあれば、業務の多くが会社という場所にとらわれず、自宅や通勤電車の中でも可能になっている。これは労働時間や仕事場の概念を変える。米国では経営幹部が秘書業務を海外の企業に依頼する事例や、リポートの作成や設計をインドの会社に外注、時差を生かして依頼主が寝ている間に完成し、朝出てきた時にはこれが使える、といった事例も聞く。四次元の前提が根本的に変るわけで、従来の経済学も前提を大きく変えなければならなくなっている。これは「空洞化」論を呼び、米国の労働機会を奪うとの懸念が生じるが、実際にはこの間も失業率の低下が続き、むしろ新たなビジネスの発生で、知的労働力が吸収されているようだ。この波は日本にも押し寄せている。最も影の部分もある。パソコンなどの機能が高まると、物価の把握上は実販価格でなく、機能アップ分を「価格下落」とカウントする。これらが広範になると、支払ペースでは値段が下がらなくても、物価統計では下落して、金利や年金の引き下げにつながり兼ねない。機械機器の機能アップを使いこなせない人にはかえっていい迷惑だ。経済の地殻変動から取り残された人々の負担、犠牲を最小限にする手立てが必要だ。
'06.11.8.朝日新聞。
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