散歩道<1354>

                   経済気象台(79)・米国経済の失速                       

 ITバブルの崩壊後、米国の住宅投資が高い伸びをみせ、米国経済はもとより、世界の成長率を牽引してきた。ところがここへきて住宅投資が大きく減少に転じ、米国の経済成長の減速要因となっている。米実質GDP成長率は昨年の10〜12月に落ち込み、今年に入って持ち直したものの、再び減速している。この7〜9月期の成長率は、前期に比べ年率換算で1.6%にとどまった。米国の経済の減速に対しては、悲劇的な見通しはそれほど聞こえてこない。「幸い個人消費や企業の設備投資が堅調だ。住宅投資の減少がそこを打てば難なく成長軌道に戻り、再び繁栄を享受できる。住宅投資の調整に時間がかかるとしても、米FRB が金融緩和に動けば、たちどころに金利が下がり、住宅投資は不死鳥のごとくよみがえる」といった見方が多数説である。しかし、今回の米国経済の行く方はこれまでと違い、相当厳しくなると覚悟していた方がよさそうだ。住宅投資が拡大していた背景には、家計部門の負債の増加があった。住宅ローン中心の負債が、経済成長を上回るスピードで増加していた。過去10年間で負債残高は、GDPに対して80%から120% へと上昇している。この40%の負債増加分が経済活動の拡大、と同時に住宅価格の大幅な値上がりを招来した。消費者は気が大きくなり、自動車や高額商品を買いまくった。堅調な消費が住宅市場の活況に支えられてきたことは明白である。一転して住宅価格の値下がりが始まると、過大な元利支払に追われて消費を切り詰めざるをえなくなる。米小売り最大手のウオルマート・ストアーズでは、今年10月の米国内売上高が同社見込みを大きく下回った。ほんの一例ではあるが、消費が停滞に入ったたことは米国経済の失速を意味している。

'06.11.3.朝日新聞

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