散歩道<1332>

                     保守とは何か・政治にはありえぬ立場(2)                      (1)〜(5)続く

・・・・・では日本で「保守政治」と呼ばれてきたものの内実は何だったのでしょう。
 
明治以降の代表的な政策は、工業を興し経済水準を上げることだった。それは計画に基づいて合理的にすすめられた。大東亜共栄圏をつくって世界の先進国と戦う政策も、間違ってはいたが一つの理念だった。いずれも理性に基づく営みで、私に言わせれば保守的ではない。事実、戦争を率いた官僚たちは当時、「革新官僚」と呼ばれた。戦後になると「保守・革新」という言葉が広くつかわれた。しかしそれは、実体を表した言葉ではなかった。実際に存在したのは、自由市場主義の立場にたつか、計画経済つまり社会主義の立場にたつかという対立だった。冷戦という状況下で、自由主義派の人々を仮に保守と呼び、計画経済派の人々を仮に革新と呼んだに過ぎない。それがいかに不適切な用語かが誰の目にも明らかになったのは、旧共産党の人たちが保守派とよばれたのだから。

・・・・・そうだとして、保守という言葉が今も違和感なく使われる理由はなんですか。

 冷戦構造は世界的に終ったが、中国や北朝鮮に見られる通り、極東にはまだ残っている。それが要因だろう。所謂冷戦終結後、世界を最も動揺させる変化はグロバリゼーションだ。これが経済に現れると自由主義的な「構造改革」になるが、そこでは旧保守派が「改革を進め、反対するのご旧革新派だったりして、もはや保守や革新という言葉では現実を全く把握できなくなっている。

'06.10.25.朝日新聞・評論家・劇作家・山崎 正和氏