散歩道<1323>

                    風知草・「美の周辺」・力集め文化の活性化をC  

 京都の町をもっと元気にしようという呼びかけが最近叫ばれている。観光も美食も、美しい着物を着ることも、生活に余力があってこそできることであって、経済変動の余波は、多かれ少なかれ文化芸術にも影響を与えたといえる。しかしこうした時だこそ、産業界、商業界、京都の全ての分野の人々が団結することによって、京都文化創世への力を結集していかなければならない。創世へのよき循環は、様々な分野が同時に活性化し、いきいきとするところに起る。一つが滞ると、体の血流と同じで、周りが悪くなり病んでしまう。また、ポツリポツリと改革の烽火が(のろし)が上がっても大きな力には成り得ない。活性化にはまず第一に先に挙げた、各方面の連帯、団結によって創世への足並みが揃うことである。私自身は文化の面から京都の活性化を推し進めようと活動を続けてきた。京都文化創世の機運の中、このほど京都御所の大英断で、京都の歴史1200年の中で初めて、京都御所の障壁画を御所外で一般の人々のために展示して頂けることになった。京都の中心にある御所が、京都文化創世の先駆けとなるべき大英断をされたことに私は深い感慨を覚える。まだほとんどの方にこのニュースは知られていないかと思うが、新年1月6日より、京都国立博物館で新春特別展覧会「京都御所障壁画」を開催する運びとなった。天皇のお住まいであった御常(おつね)御殿の襖絵(ふすま)が一挙に展示されることは、これが最初で最後かもしれない。御学問所と合わせて200余面の障壁画が一堂に展示される。私たちが日頃拝見することの出来ない御殿内の襖絵を間近に鑑賞できる、またと無いチャンスである。御所に描くとなれば絵師側も、品格、知性、美を強く意識して制作にあたるわけで、当然その障壁画には、その時代の品格や美に対する意識そのものが反映されている。この封印された珠玉の日本美がこのほど公開されることを機に、京都から世界に、わが国の悠久の日本美を発信するにふさわしい京都文化創世の幕開けができることを願っている。京都の様々な分野に携わる方々も、皆でこうした機会を生かし、活性化への努力を一人一人が積み重ねていって欲しいものである。

'06.10.13.朝日新聞・京都国立博物館長・佐々木 丞平さん