散歩道<1246>

                  時を読む・たしかな言論 活かすには(1)          (1)〜(3)続く

 家族のかたちというのは、多様である。その多様さは、この2、30年、加速的に進んできた。離婚の増加で父子家族や母子家庭が増えているし、別に所帯を持っている息子、娘が介護シフトをしいて一時的に親と同居しているような形態も増えてきた。家族の一員が単身赴任で常時不在であったり、息子・娘が「パラサイト」状態であったり、2所帯が住宅をシェアして「共同家族」をいとなんでいたり、単身者がルームメートとして擬似家族を構成したり・・・・。昔よくあった「住み込み」や「下宿」がほとんど見られなくなったぶん、都市部では未婚者・非婚者、それに独居老人といった単身者が確実に増えている。言うまでもなく、子供のいない家族、高齢者だけの所帯も増える一方だ。家族はこのように急激に多様化してきたのに、住宅はといえば、頑迷なばかりにワンパターンである。公団住宅にしても、「核家族」をイメージして、家族の員数マイナス1の数の個室(主婦の居場所はダイニングルームと想定してマイナス1)と共有空間としてのリビングルーム1、玄関もトイレもバスルームも一家族に一つ、というわけだ。家族の数だけ入り口があって、その入り口から個室に直行できるような設計の新しい公団住宅のかたちが実験的につくられる例もないではないが、集合住宅のほとんどはいまだにこの「核家族」を内向きに想定した設計になっている。一説には、家屋が単なる消費物件となり、汎用性を持った設計のものが将来売却しやすいので、こういう設計になるということらしいが、それ以上に、家族のイメージがあまりにも定型化されているというのが理由ではないかと思う。

'06.8.21.大阪大学副学長・鷲田清一氏
備考:鷲田清一先生は'07.6.大阪大学の学長になられることになった。おめでとうございます!。


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