散歩道<1245>
経済気象台(69)・エンジニアよ奮起せよ
「20世紀を作ったのはエンジニアである」といったのは米ゼネラル・モーターズの「中興の祖」とされたアルフレッド・P・スローン・ジュニア(1875-1966)である。 なるほど、20世紀の革新をもたらした自動車、飛行機、通信、コンピューター、その他もろもろのものを作り上げたのはエンジニアであった。「21世紀をつくるのも又エンジニアである」と言ってよいであろう。ではエンジニアというのはいかなる連中か。元々は「エンジンを動かすオヤジ」という意味で、紳士階級とはみなされなかった。エンジニアの元祖というべきジェームス・ワット(1736-1819)、グラスゴ−大学実験用器具を作ったり修繕したりする職人であった。彼の蒸気機関へのかかわりは、グラスゴ−大学からニューコメン蒸気機関の修繕を頼まれたことからはじまる。世界で最初の実用的蒸気自動車を作ったリチャード・トレビシック(17771-1833)は乱暴者で、しばしば腕力に物言わせたといわれる。「発明王」のトーマス・エジソン(1844-1931)も異端の人であった。最近、東芝の元技術者が在職中の「フラッシュメモリー」発明への正当な対価を求めた訴訟で、東芝側が8700万円を支払う和解が成立した。日本で自らの待遇に声を上げるエンジニアが目立ち始めたのは、逆にいえば、今までは実に従順で主張がなかったということになる。明治以来、政府や企業の中枢は文系の人間に握られエンジニア、は駒の一つとして諾々と働いてきた。偉大なエンジニアの先人たちは、新しき物に対する狂気にも似た情熱と主張で共通している。わが国が「科学技術立国」を目指すためには、エンジニアにもう少し血の気があってもいい。エンジニア諸氏の奮起を望みたい。
'06.8.16.朝日新聞
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