散歩道<1237>
経済気象台(65)・偽装社会(2)
この国では、政・官・民を問わず、偽装が横行している。それでも、「政」の偽装については、幸いか不幸か国を危うくするには至らない。個々の政治家はしょせん個人経営者に過ぎず、偽装による腐敗行為は利権へのタカリの域を出ないからである。また、ビジネス界に対しても一応の対応策がある。偽装が判明した企業には、消費者や市民は買わない、使わないという権利を行使できるからであり、往々にして城を傾けることはあるが、国を傾けるには至らない。ところが、「官」の偽装行為は実に、国を傾けるのである。偽装は組織の腐敗が現象として表れるものであるが、多くの場合汚職行為を隠蔽(いんぺい)する役人用語で糊塗(こと)されてしまう。岐阜県のように、積みあがった裏金を飲食に乱費したという詐欺・横領行為についても、プール金などという中性的な表現に置き換えようとする。このような偽装行為に対し、受益者たる国民がその対価である税金を支払わないという「ウォールストリート・ルール」が適用できない。歳入を納税という義務として国民に課す一方で、歳出という出費権限は公僕に過ぎない官僚が独占するという巧妙に分断化された仕組みが腐敗の根源にある。これは、罰則規定を欠くために国民が不払いという抗議を行なっている結果、塗炭の苦しみにあるNHKと対比してみれば明らかであろう。偽装の根底には「組織の腐敗」という問題がある。この国の官僚・役人は有能で勤勉だという意見があり、そうかもしれないが、組織の利益のために行動する際にもっぱらその能力を発揮する結果、国や自治体を破綻の縁に追いやっている。財政再建には増税が不可欠という説を説く政治家や学者がいるが、これこそ傾国の言説であり、組織腐敗を根絶しない限り、危機は2度、3度と訪れる。
'06.9.14.朝日新聞
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