散歩道<1234>
  
                    経済気象台(62)・強い円と国内市場

 日本の輸出は高い品質と技術力によってここ5年間50%も増加した。かって欧州中心の市場に強大な人口を抱える中国やインドが加わり、全世界の市場が最先端製品を飲み込んだ。二大輸出産業は自動車と電気機械である。主要な大企業を見ると、海外売上が急増し、利益を大きく増やしている。そして海外売上高が売上高の過半を占める。ところが国内売上は増えていない。また輸出による利益を除いて国内市場に限ると、利益の寄与はきわめて低いように見える。元気なのはもっぱら海外市場なのである。バブル崩壊後の長期低迷をはねのけようと、円安誘導を行い、輸出主導の景気回復を求めてきた。そして、巨額の財政資金を使っての介入と日銀の超金融緩和がなされた。しかし、いまだに国内市場は低迷したままである。「弱い円」が個人消費を抑える力として働いているからだ。第一に、為替市場でドル売り・円買い需要が出ないようにして円を安くしている。そのため経常収支黒字分は国内に持ちかえらず、アメリカに貸したままになっている。これが資本輸出だが、国内の購買力をアメリカに移転し、その分、日本の消費が抑えられている。第二に、「弱い円」のために、石油や食料品などの輸入コストが高くなっている。その高い分だけ、消費者は買い物を手控えることになり、消費は増えない。第三に、ドルを支えるために金利をゼロにまで下げた。アメリカに比べ金利が低ければ日本からの資本輸出がスムーズにいくからである。このことによって、家計部門の貯蓄から生じる利子所得が激減し、消費意欲は抑えられた。「強い円」を選択すれば、たしかに不採算となる輸出は減少する。しかし、消費は活気をもたらす力が動きはじめる。「強い円」の効果を議論する必要がある。

'06.9.6.朝日新聞

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