散歩道<1215>
経済気象台(61)・夕張の再チャレンジ
夕張市の財政が破綻した。年間44億円の財政規模に対し負債は600億円を超え、返済不可能なことが明らかになった。財政破綻の要因ははっきりしている。第一に、主要産業が縮小し人口も急減した。第二に石炭に変わる牽引役の創出に失敗した。観光振興を図ろうと財政資金をつぎ込んだが、効果は限定的だった。第三に、地域経済・税収停滞の悪循環で膨らんだ負債を、一時借入金によるやりくりで隠し続けた。夕張は日本の縮図である。政府は低迷した経済を公共投資で立て直そうとして、財政赤字を急増させた。一般会計税収比率は桁(けた)こそ違え、良く似ている。夕張の高い高齢者比率や人口の大きな減少も、これからの日本を暗示しているようだ。「夕張のようにならないために成長産業の創出や財政再建に早期に取り組むべきだ」という教訓を引き出すことができる。しかし夕張は、もう一つのことを教えてくれている。それは、経済的・財政的困難が、「自分の地域をどうしたいのか」を考えるきっかけを与えてくれたということだ。実際夕張市を訪れると、中心街は軒並み休業状態で、映画「幸福の黄色いハンカチ」で見た賑わいはない。しかし市民は、官によるお仕着せや施しでなく、夕張メロンや映画祭などこれまで培ってきたブランドを生かしつつある、自らが住みたいと思う街に再生させるべく模索を始めていると聞く。政府は「財政再建」という客観基準だけで再生の芽をつぶす前に、そのような夕張市民の努力を後押しすべきではないか。小泉改革の本質は「不出来な者はつぶす」だったが、新政権のキーワードは「再チャレンジ」になるようだ。夕張の再チャレンジをどう生かすかが、新政権の踏絵になる。
'06.8.25.朝日新聞