散歩道<1214>
経済気象台(60)・格差拡大は現実か幻想か
格差拡大に対する関心、懸念が引きつづき高い。メディアは・派遣社員の賃金の低さや労働環境の劣悪さ、生計を維持できないほどの低収入を余儀なくされる労働者の実態を生々しく報じる。OECDも報告書の中で、「日本は先進国の中で、貧困層の割合がもっとも高い国のひとつになった」と書いた。一方で、政府が先日発表した「経済財政白書」は様々なマクロ統計を用いて、所得格差の拡大は高齢化の影響が大きく実態的な格差は見掛けほど広がっていないとの分析結果を導き出しいている。一体、格差拡大は現実的なのか幻想なのか。この手の議論の常だが、真実は中間にあるのだろう。つまり、「格差は広ろがっているが、まだ部分的である」というのが実態に近いと思われる。筆者が懸念するのはむしろ、格差拡大に過敏となり「負け組」になることを恐れるあまり、人々が非合理的な行動に走っているのではないかということだ。最近の教育熱は、過熱を通り越して異常だ。親たちは、将来のより高いキャリアと所得を期待して、子供を小さいうちから勉強に駆り立てる。それは決して間違いではないが、全てが志望校に入れない以上、全体としてみれば、「負け組」の創出を早めているだけである。職業選択やキャリア形成が複線化している中で、多様な価値観を育む方が子供の将来にとっては重要なはずだ。パートや派遣社員の増加もかならずしも否定的にとらえるべきではない。高い能力と意欲をもつ主婦にとって、柔軟な勤務形態は子育てや介護と仕事を両立させる重要な条件である。問題なのは仕事の中身も生産性も変わらないのに、正社(職)員・非正社(職)員間の時間当たりの賃金格差があまりにも大きすぎるという不均衡の方だ。そのような非合理的な行動や思考こそが、格差を拡大させる要因の一つになっていると思う。
'06.7.24.朝日新聞
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