散歩道<1208>
漂流する風景の中で・岩井克人さんと考える(3)・資本主義と会社 (1)〜(5)続く
経済の中心は人間へ移行
これからの会社では、過去のどの時代よりも人間の独創性が重要と成るだろう。「違い」を意識的につくりださなければならないからだ。だが、優秀な個人だけしか必要でなくなるのかというと、そうではない。新しい技術も新しい製品も、他社にすぐにまねされてしまうためだ。いま商品のライフサイクルはどんどん縮まっている。違いを連続して生み出せるようなチームをいかにつくり、そのチームを組織としてどう支えていけるのかが、会社の最重要課題となる。「失われた10年」を経て、日本で「成功した」といわれている会社は、日本的経営の泥臭さを切り捨てなかったトヨタやキャノンであり、逆に米国流の会社統治を取り入れたソニーが一時低迷したことは教訓的だ。エレクトロニクス産業が不振だったこともあり単純な比較はしにくいが、トヨタやキャノンは、違いを連続的に生み出すための組織作りに地道に取り組んでいたことだろう。
経営者の倫理性が不可欠
資本主義の中核をなす会社とは、単なる企業ではなく、法律の上で人として扱われる法人企業のことだ。本来人間ではない法人が、現実の経済の中で人間として振舞うためには、それを人間のように動かす生身の人間が必要となる。それが会社の経営者だ。例えば会社の契約は、実際には経営者が会社を代表して結ぶ。だから、経営者と会社との関係は契約にはなりえない。経営者が自分で自分と契約をむすぶことになるからだ。
'06.7.25.朝日新聞・東大教授・岩井克人氏
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