散歩道<1203>

                    経済気象台(55)・生産性向上は結果でもある

景気回復の持続の中で第3次産業が順調に拡大している。日本では就業者の焼く7割が従事し、多くは内需向けだから、日本の経済が新たな成長プロセスに入ったと思わせる十分な証拠といえよう。これにより景気回復が本物だと多くの人が実感している。特に、サービス業の活性化により、その実感はさらに強まる。政府の骨太の方針のなかでも、このサービス産業を今後の日本の成長にとって重要な分野として注目し、ITの発展と絡めて一層革新していくことが強調されている。サービス業をIT活用で効率化し、生産性をあげて、将来、経済発展のエンジンにしようというわけである。生産性の革新が経済発展を生むという多くの経済学者が好む論法である。ところで、サービス産業では消費と生産が同時になされる。需要がなくても生産が可能な実物経済とは異なる特徴である。逆にいえば、サービス産業では需要がなければ生産は生じない。こういう特性を考えると、実物生産と同様な効率化が本当に意味を持つだろうか。生産性を上げて少ない人員で多くのサービスができるからといって単純にサービス需要、消費は拡大するだろうか。大いに疑問である。サービス産業の生産性向上は、実は需要拡大から生まれるというのが経験則ではないか。お客さんが押し寄せるサービス業の生産性はいやがうえにも高まり、いくら高効率システムを備えても、客に見放されたサービス業の生産性は恐ろしく低いはずである。生産性向上が需要増に寄与するのは価格が大幅に安くなり、客が価格低下以上に拡大する通信のような装置型サービスに限られるのではないか。つまりITの活用はサービスそのものの魅力の向上に用いるべきで、これを喜ぶ客が殺到して初めて生産性が向上する。まさに生産性向上は結果に過ぎない。

'06.8..朝日新聞