散歩道<1201>
思想の言葉で読む21世紀論・表層化(2)・視覚優位 ネットで拍車 (1)〜(3)続く
「最近は目に見えるものを重視する動きがさらに加速し、視覚が表層化している」という小倉氏は、背景にはテレビ以上に目で情報に接するインターネットなどの普及があると見る。「目に見える情報や出来事を追いかけることに追われているうちに、見えないものについて考えるゆとりがなくなった」。そのために、本の行間を読み取ることや、人物の雰囲気、たたずまいのような全体像に目が向かうことも少なくなった。さらに、都市化が進んで生活空間が光におおわれ、暗い闇に接する機会が減ったことも、人間の感覚の変化に拍車をかけているという。「光に照らされた表面だけに目が向かい、暗い部分や見えない部分を想像する力が衰退した。だから他人の苦痛や痛みに対する感覚も希薄になっている」。小倉氏は「表面だけの空間は生きる実感を描いた不安定な世界になりかねない」とも警告する。
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社会学者の桜井哲夫氏は、社会が表層化する背景にはグロバル化で世界の構造や成り立ち方が大きく変わった現実があるとみる。「急速に進んだグローバりゼーションは世界中を同じ均質な空間に変え、あらゆるものを目に見えるもの、売れるものにしてしまった」。スポーツがメディアの中の巨大な見せ物に成った例に見られるように、そこでは人々の視線を引きつけるものが価値をもつ。記号として一目で分かる世界的なブランドが勢いを増しているのも、グロバル化と表層化が一体で進んでいることを物語る。
'06,9.6.朝日新聞 