散歩道<1188>

              小泉改革で経済どう変わったか・不良債権処理で景気回復(2)     

格差・拝金主義・・・・弊害も 
  しかし、改革によって非効率を排した結果、様様な痛みが拡大した、という批判がある。最近もっとも大きな論点は格差の拡大である。景気回復を優先したために、労働者の所得向上がおくれている。いまだに雇用所得には、力強い改善は見られない。一方、株価の回復などで、金融取引で膨大な所得を得る人々も増えた。不安定な雇用で低所得に耐える人とITや金融で膨大な富を得る人との格差がクローズアップされ、所得格差の広がりが問題になった。産業の少ない地方では、公共事業の削減によって収益源がなくなり、都会との格差が大きく広がっている。所得格差の拡大が事実かどうかはデーターに問題があるなどの議論もあるが、景気回復の中でその恩恵からとり残された人々の不満が高まっていることは間違いない。また道徳的退廃も、改革の結果だと問題にされた。
小泉改革で広まった素朴な市場礼賛の中で、マネーゲームが加熱し、拝金主義が横行した。拝金主義は経済に活力をもたらす面もあり、一概に否定すべきものでもないが、それを苦々しく思う人は多い。ライブドアや村上ファンドの摘発は、いわば検察による小泉改革批判だったとも見える。市場競争の不備も指摘された。企業が利潤追求に重点をおく中で、市場では目に見えない安全性がおろそかにされた。JR西日本の事故や耐震偽装問題などの広がりは、企業倫理と安全規制の重要性を訴えるものだった。また、ライブドアや村上ファンド事件は、日本の金融市場ルールが未発達であることへの警鐘ともいえる。格差、マネーゲーム、安全違反などは詳しく見れば、市場ルールの未整備や欠陥によって起きたとわかる。だから、ルールを、いっそう公正なものに発展させることで解消できるはずだ。しかし、小泉改革へのこれらの批判は、改革の基本的な方向性を否定する議論に容易に流れてしまう。

'06.8.28.朝日新聞 小林慶一郎氏

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