散歩道<1176>
時を読む・イメージ先行「格差社会」(3) (1)〜(3)続く
さてしかし、「格差」は絵空事ではない。それがイメージとして広がり、イメージに留まっていることが大問題なのである。というのも、イメージにとどまっている限り、なぜそうなのかという根拠を説明できず、従って現状を動かすことができないからである。例えば、働いても年収200万円以下であることには、企業の雇用形態と租税負担の構造に理由がある。又例えば、公務員の年金だけが安定していることにも、ヒルズ族のような冨裕層が短期間に生まれることにも、すべて理由がある。第一、世界第2位のGDPを誇る国で、働いても働いても貧しいということがあるのなら、それはた端的に、政治が政治の役目を果たしていないということだろう。それでもなお、イメージに留まっているために、日本人はこんなにもおとなしく振る舞い、暴動の一つも起こさないのではないか。もしも格差の現実とその構造を少しでもみていたなら、さしずめ社会保険庁などは、いまごろデモ隊に取り囲まれていてもよいはずだ。現実はイメージの比ではない。私たちは格差社会、格差社会と吹き込まれことによって、むしろ格差の本当の姿を見ないように仕向けられている。なかでも「ええねん」が口癖の私たち関西人は、現実と向き合わないことにかけては天下一だから、路頭に迷うまで目が覚めないということになりそうである。
'06.8.21.朝日新聞・作家・高村 薫様
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