散歩道<1170>
           好感」のありか(3)・「等身大」に疲れ、非日常へ  現実離れキャラに道徳教わる      (1)〜(3)続く 

そもそも現代人は他人への共感が希薄なのではないか。名古屋大学教授(教育心理学)*1速水俊彦さんの見方だ。著書「『他人を見下す若者達』で、現代では、若者に限らず多くの人が「自分は他人に比べてエライ」と他者を軽視する事で自分への肯定感を高める「仮想的有能感」を身につけていると指摘。仮想的有能感を持つ人は他人には関心が薄く、共感性のなさが特徴と記す。ネットで検索すれば瞬時に膨大な情報を得られるようになったことも背景の一つにあげられている。同書は、テレビ視聴との関係についての調査結果も紹介。同大学院に在籍している宮川純さんによる04年の調査で、愛知県の大学生約260人を調べたところ、仮想的有能感が高い人はドラマを見ない傾向があった。ドラマは共感しないと楽しめないからではないか、という。ならば逆に、現実逸脱キャラならこのタイプの人にも受け入れられる可能性がある。宮川さんは、逸脱キャラは、人間関係に縛られずに言いたいことを言ってるのが魅力。発言内容ではなく、ブレない姿勢にあこがれるんだと思う」という。ブレない姿勢の小泉首相も人気を維持し続けた。説教っぽい番組については「自分が説教されるのはイヤだけど、自分とは関係のない他人が諭されるのを見て、仮想的有能感を抱いている面もあるかもしれない」と語る。ある民放関係者も「視聴者に優越感を抱かせるような番組が目につく」と語る。しかし、と速水教授は指摘する。「みんな、逸脱するヒーローに深く感情移入しているわけではない。軽く引かれる、ぐらいではないか」「弁護士のくず」を見た現役の弁護士は「ぼくは好きだなあ。でも実際、あれじゃこまるけど」と話していた。現実から逸脱し、説教めいたセリフを吐くテレビの人物達を「面白い」と持ち上げつつ、優越感に浸ったり、「しょうがないなあ」と庇護(ひご)感覚を抱いたり、好感と困惑と、その奥底に、過剰な情報や窮屈な人間関係の間を揺れる気分が見える。

'06.8.23.朝日新聞

関連記事:散歩道<1340>*1若者の心を育む

                                      7     8