散歩道<1166>

               「好感」のありか(2)・つながり求めて伝統回帰    批評なき記号「かっこういい」   (1)〜(3)続く

ジャーナリストの武田徹さんが背景に見るのは、インターネットの爆発的な普及だ。「どんな時代でも、人はつながり合いたい。なのに、家族や会社といった従来型の共同体に夢がもてなくなり、孤独になっている。インターネットは不特定多数の人とつながることを可能にした。だが、『2ちゃんねる』のような匿名の世界で、他者との共通点は精々『日本人であること』しかない。現実の世界も「2ちゃん」化しているのではないか」。そう、スポーツ観戦でも、野球やサッカーなど「日本代表」への関心が特に高い。最も好感を抱かれている男性・・・。SMAPの木村拓哉は、その一人だろう。女性雑誌「anan」で12年連続で「好きな男」に選ばれている。その彼が好感を抱く人物が白州次郎(1902〜85)だ。同誌の別号で「いま会いたい人」に名前をあげていた。「実際は会えないけれど、どんな男か感じたい」と。Tシャツとジーンズを着こなし、スポーツカ−を乗り回す。ダンディさの一方、終戦直後の占領下で、連合軍総司令部(GHQ)に対峙した「従順ならざる唯一の日本人」でもある。テレビで紹介された翌日に評伝が売れる。白州次郎ブームを支える読者には20〜30代が多い。劇作家の宮沢章夫さんは「『かっこういい』は絶対的でない。本当にそれがかっこういいのか話すべきなのに、批評性がない」と感じる。宮沢さんは、人々が小泉首相のワンフレーズにひかれるのも、考えることから逃げて批評を放棄しているから、と考える。「そうやって保守化すれば安定感はある。でも、本当の面白さは先が分からない不安定さの中にあるのに」

'06.8.22.朝日新聞

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