散歩道<1141>
経済気象台(53)・内需主導型回復は本当か
景気回復の「いざなぎ超え」はますます確実になってきたが、その牽引役は内需だといわれている。確かに、設備投資の拡大が続き、個人消費も回復している。しかし、実は輸出の寄与はそれ以上に大きい。02年から05年にかけて、実質GDPは年率2.1%成長したが、その半分強(1.2%)は輸出の拡大によるもので、個人消費や設備投資の寄与を大きく上回っている。輸出指導型成長と言われた80年代前半における輸出の寄与は5分の1だったから、今回の景気回復は、当時以上に輸出に依存していることになる。その背景には、日本がグロバリゼーシヨンの敗者から勝者に転じたことがある。安価な製品の大量生産では中国に敗れたが、日本企業は高付加価値を進め競争力を高めて、世界の消費者や企業が求めてやまない製品を供給するようになった。それが輸出の拡大をもたらし、景気回復の強力なエンジンになっている。その結果、輸出の直接・間接の影響力は大きくなった。例えば自動車関連メーカーの収益、設備投資拡大の背景には、好調な海外生産、販売がある。他方、国内自動車販売は低迷を続けている。だとすれば、景気に対する海外経済の影響は以前より大きくなっていると考えるべきである。折あしく、アメリカ経済は急減速し、インフレ圧力は根強く残っている。経常赤字も膨張を続けており、ドル下落のリスクも引き続き大きい。中国は高成長を続けているが、その裏側で過剰設備と不良債権が積みあがっているのではないかとの懸念が消えない。それは、中国経済がいづれ減速局面を迎える可能性があることを意味する。その結果として日本の輸出が停滞する時、その悪影響が予想以上に大きいことに、我々は気づくことになる。内需主導型持続成長が達成されたと慢心しては危ない。
'06.8.9.朝日新聞
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