散歩道<1139>

                   経済気象台(50)国民の目線と政府の目線

 レギュラーガソリン1g145円、ネギ1本120円。一部にはあの石油ショック時以来の値上げに悲鳴が聞かれるようになった。消費者の防衛策としては、値上がりした物を買わないか、インフレ分をヘッジ(資産の目減をカバー)する手立てが必要になる。ところが、現実にはこうした自己防衛策の手段は限られている。6月の全国消費者物価は、前年比1%の上昇となっているが、その内訳を見ると、数字以上に家計の負担が大きい形になっている、例えば、物価上昇率の大きいものを見ると、灯油などの「その他光熱費」が26.9%の上昇、生鮮野菜が19.2%、身の回り品5.8%、生鮮果物5.6%ガス代5.1%、生鮮魚介3.6%ガソリンなど自動車等関係費が2.8%といった具合だ。これらは総じて生活必需品・サービスで、「買わない」という選択が難しい。政府は、消費者物価のうち、生鮮食品を除けば0.6%の上昇にとどまり、生鮮さらにこれからエネルギー関係を除くと0.2%で、しかも今月統計の基準改定をすれば0.2%くらいは下方修正されるから、まだデフレが終わったともいえないと言う。確かにまだ値下がりしているものはあるが、それも教養娯楽用耐久財、家庭用耐久財、室内装飾品などで、必ずしも生活必需品でもない。政府、特に財務省は値上がりしているものを取り除いた上で「まだデフレだ」とし、それを理由に日銀の利上げを必需品牽制(けんせい)する。そうなると、国民はインフレを預金金利でヘッジすることも出来ない。そればかりか、デフレだという政府が、一方では増税を進めている。次期総理には、国民の視線で経済をとらえ、政策を考えてもらいたい。少なくとも、財務省の立場から、消費税の引き上げを主張するような人より、国民の利益や生命財産の安全を真剣に考える人がのぞましい。

'06.8.5.朝日新聞