散歩道<1123>

                 思想の言葉で読む・21世紀論(3)・時熟
                          揺らぐ人間の時間感覚                        (1)〜(3)へ続く 

「古くから人間は時間は恐ろしいものだととして畏敬の念をもってきたところが近代文明は時間も人間が自由に管理できるはずだと考え、技術で時間を早めようとした。その「変化の速度に身体が追いつけないために。時間が揺らいでしまったのではないか」時間の秩序が失われるとともに、多くの文明は崩壊に向かったという。今回の時間の変動も、何か大きな変化の前触れなのだろうか。「歴史の大きな筋目には人々の時間意識も変る」と歴史学者の成田龍一氏(日本女子大教授)は語る。日本人は100年あまり前にも大きな時間意識の変化を体験した。明治の新政府は新しい時間も西欧から導入。地域ごとにもバラバラだった時が、均一で直線的な近代時間に統一された。近代時間に従うことは学校や公共の場で強制されたが、新しい時間のリズムに人々の身体感覚がなじむのに半世紀近くかかったとういう。明治期との大きな違いは、「いま起きている変動は、制度は変らないないのに人々の身体感覚が時間とのずれを感じ初めている点にある」と成田氏は指摘する。時間の個人化が進んだために、時間を共有することで成り立っていた国や社会のまとまりもくずれつつある」と見る成田氏は「しかし必ずしも近代時間までが崩れたわけではない」ともいう。グロバル化で世界共通の時間はより強固になっているからだ。「むしろ問題は、新しい時間の秩序を誰が管理しているのか。その姿が見えなくなっていることではないか」時間を自由には出来ないことを知って、人間が再び時間の力に畏敬の念を抱く時が近づいている

'06.5.23.朝日新聞