散歩道<1101>

                        経済気象台(48)・少子化対策

少子化・高齢化は今後の日本にとって大きな懸念だが、両者の原因はそれぞれ異なる。少子化がここまで進んだのは子育てに費用、特に教育費がかかり過ぎること、しかも国や社会の未来に明るい希望が感じられないからだろう。しかしそれが理由なら、解決の道はあるのではないか。いまは誰もが大学にゆかねば芽が出ないと思い、親たちは進学のために無理をしてでも、高いお金を出して学習塾に通わせる。しかし、この路線で知識と利害感覚に偏った教育環境に育った秀才たちは、いざという時に社会や国のために身体を張って闘うバックボーンではひ弱い。それどころか知識や立場を利用して国民を欺いたり失望を買ったりする例も増えている。目先の比較競争で心は休まらず、所得が高いから幸せとも言い難い。私利は横におき、多くの人々に役立つことを優先する人が育ち、個人として使命を果たす充実感に本当の幸せを感じるという、かっての好循環は衰弱している。このような変化を肌身に感じている女性たちがそういう未来に希望を失い、子供を産む気になれなくなったとしても無理からぬことである。保育施設の拡充などの対症療法も必要だが、より根本からの対応が必要ではないか。子供たちも青年も一人ひとりが較べようのない大切な志を持って生まれている。そのことへの畏敬(いけい)の思いをもってその可能性が開花するための良き縁となるのが教育である。その意味では学校だけでなく、家庭も会社も、又共同体である社会も、その当事者である。そして生活文化や精神的な伝承という地域や国のアイデンティティーの尊重も大切な教育の一環だと思われる。大学の改革も、私利よりは社会や国のために働く志をもつ人々を育む教育の場であるというバックボーンが強まる方向で、いま一度見直す必要があるのではないか。

'06.7.6.朝日新聞

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