散歩道<1100>

                      経済気象台(47)・イベント化消費

奇跡は起ることもなく、FIFAワールドカップの日本代表チームは一次リーグで敗退した。クロアチア戦までの60%近いテレビ中継の視聴率は、サッカーフアンだけでなく、いわゆる日本中の普通の人たちがサッカーに強い関心を示していたことを伝えている。愛国心を掻き立てられた人。純粋にサッカーの迫力に感動した人、様々な思いの中、ここ数年、日本人が志向している消費の一面も顕在化した。今、日本人は、多少の格差はあるものの、おおむね豊かさの中に生きている。家電製品に代表されるように、日本人は、多くのモノに囲まれ、その恩恵のなかで暮らしている。だから、よほど、画期的な商品でもない限り、日本人はモノに対して感情が沸き立つような場面がすくなくなった。様々な情報に慣らされた私たちはメディアにたいしても同様の状況である。以前に較べて、日常で「どきどき」や「わくわく」等の感情を抱くことも少なくなったという声も聞く。それでも、今、日本人は、平板な日常に飽き足らず、日常少なくなった感動や興奮を別のもので獲得しようとしている。4年前の日韓大会同様、ペイビューが行なわれた日本のサッカースタジアムや、スポーツバーには、代表チームのユニホームに身を包んだ人たちが多く詰め掛けた。彼らは、見知らぬ人たちと一緒に観戦し、試合経過に共に一喜一憂し、気持ちを盛り上げた。花見や花火にも、若者を中心に多くの人が集まっている。彼等は、友人と一体感を抱きながら盛り上がり、感情にめりはりをつくっている。一方で、いろいろなマイ記念日を設定する女性や、よく頑張った自分にご褒美を買い、自分の気持ちの抑揚をつける女性も増えている。あえて自分の気持ちを演出するための消費だ。欲の多くが達成された豊かさの時代ゆえのイベント化消費である。

'06.7.4.朝日新聞                              next