散歩道<1099>
経済気象台(46)・円高は経済の足かせでない
このひと月で為替は7円ほど円高になった。先のワシントンG'で、アジア通貨の柔軟な調整が求められたこと、FRBのバーナンキ議長が、議会に対して利上げの小休止がありうる、と証言したことから、投機筋がそれまでの円売りポジションを一気に巻き戻したことが寄与しているようだ。シカゴ商品取引所のIMM為替先物取引を見てみよう。投機筋の売買が反映されやすい非商業取引で、円先物の売り越し枚数が4月はじめには6万枚弱あったが、連休中には3千枚近い買い越しに転じている。それだけ急速な円の買戻しがあったということだ。裏を返すと、投機的な円の買戻しはこれで一服したことになり、後は実需に応じた動きに戻る。その場合、経常不均衡からは引き続きドル売りが発生するものの、資本取引は依然としてドルに向かいやすく、経常取引でのドル売りを中和することになる。日米の金利差がいずれ縮小しそうだが、当面はドル優位が拡大する方向にある。また、債券市場ではドル債に金利低下による値上がり益の期待が持てるのに対し、円債には逆に金利上昇で値下がりの損失が生じやすく、資本は米国に流れやすい。株式市場は金融相場が期待される米国と行政相場の日本が綱引きとなる。日銀短観によれば、今年度の企業が想定する為替は110円程度となっている。今後円を大きく越えるような円高にならない限り、経済を圧迫する懸念は小さい。むしろ、円高には原由や鉱物資源などの輸入価格上昇を抑制するメリットがあり、内需にも都合がよい。歴史的にみても、日本経済が円高で腰折れしたケースはまれで1ドルが80円割れとなった95年でも景気回復の基調は崩れなかった。多少の円高なら夏にも、政府のデフレ脱却宣言とともに、日銀のゼロ金利解除も実現しそうだ。
'06.5.10.朝日新聞
関連記事:散歩道<1069>経済気象台・円高を楽しむ、<1098>日本と中国の通貨外交、<1141>内需主導型、<1234>強い円と国内市場、<1352>美しい通貨主権、<1354>米国の社会、<1358>赤字よ永遠なれ、