散歩道<1098>

                    経済気象台(45)・日本と中国の通貨外交

 長年にわたり、日本と中国で金融に携わってきた米国人の友人とひさしぶりに会った。日本との比較を交えて、彼のお目に映る中国の通貨外交を説明してくれた。「日本はおしもおされぬ先進国である。しかし、通貨政策の根幹を理解し行動している国か、という点から見ると、残念ながら中国の方が進んでいるようだ」が、彼の結論だった。中国はいまや日本を追い抜いて、世界最大の外貨準備を保有する国になった。対米黒字を中心に、このところ経常収支の黒字が急速に累積しているからである。しかし、中国は日本のように、黒字を長く累積し続けることはなさそうだという。もちろん、米国が中国に対して、為替相場を市場に委ねて人民元を切り上げ、黒字すなわち輸出超過を減らすように強く求めていることもある。こうした米国の要請を中国はそのまま受け入れてはいない。中国は自由化を勧めるが、米国の言うほどまでは時期尚早で、為替レートは自ら管理して決めるとしている。この中国の主張は、対米黒字をこれからも続けたいということではない。対米黒字によるおカネの行き着く先を、中国はよく知っている。中国の金融にかかわる高官の話だそうだが、輸出超過とは、すなわち生産しても自国で消費しないことである。それが貯蓄を作り出し、資本輸出となっておカネが米国にもどっていく。このおカネを米国が自由に使って、金利を下げたり減税したり、あまつさえイラクの軍事費にもつぎ込んでいる。中国にとっては、金利をもらってはいるが釈然としない。いずれ中国は黒字を減らし、おカネを米国から引き揚げ、自国内で消費を増やして自分たちの生活を豊かにすることに使うつもりだ、とはっきりと言っているそうである。確かに、日本の通貨外交に見過されている視点である。

'06.7.5.朝日新聞

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備考:この中国の通貨外交の考え方には、私は大変興味を持っています。