散歩道<1069>
経済気象台(35)・円高を楽しむ
先月中ば、ある大手電気メーカーの社長が投資家向け説明会で、「為替変動は経営にニュートラル(中立)」と話したと報じられた。円高などものともせず、とも受け止める経営トップの発言に様変わりの印象を受けた。円高というと、条件反射のように「円高不況」が連想され、歓迎される言葉ではなかった。日本経済を牽引(けんいん)してきた輸出中心の大企業への打撃が大きかったからである。しかし全ての企業とはいわないまでも、円高によるマイナスの影響を最低限に抑えられるようになっているとしたら、そろそろ円高のプラス面を考える時期だろう。円高、言い換えれば円が強くなると、海外の品物が安く手に入るようになる。強い円の効果は広範囲に及び、多くの人の生活を豊かにする。例えば、昨今の原油高を反映してガソリン価格が値上がりしている。遠出を控え、ガソリンの使用量を節約して家計はやりくりせざるをえない。円高によってガソリン価格が値下がりすれば、以前と同じように遠出ができる。外国製ワインも円高によって割安になれば、これまでよりワンランク上の本場のフランスワインを楽しめる。もしくは、浮いたお金でチーズを買えるというものだ。円高を恐れることがなくなると、さらに朗報がある。今までは円を安くする目的で金利をゼロにまで下げ、お金を海外に追い出してきた。預金を老後の生活のために蓄えていたが、あてにしていた金利を生まず、消費はしぼむ。金利が正常化すれば,、毎年失ってきた推定される20兆円ほどの所得が戻り、消費が増える。さらに妥当な金利となれば、貸し倒れリスクのある中小企業融資に、銀行も積極的に取り組み、設備投資も活発になる。消費と投資と相互に呼応して、経済活動が本格的な拡大に動き出すと期待される。
'06.6.6. 朝日新聞
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